Interviews


2005年フジ・ロック・フェスティバル。雷雨の中ステージに登場したライアンは、はたから見ていてもイライラしているのが分かるくらいに気持ちが暴れていた。いや、結果的には気持ちだけでなく、言動も暴れ出した。結果、予定されていた演奏時間の半ばでステージを降りた。激しいノイズをまき散らしながら。フィールド・オブ・ヘヴンでのトリ。初来日公演にはうってつけのシチュエーションでライアンを堪能しようと待ち構えていたファンの多くは落胆し、そして、「ライアンだからなぁ」と、それもまた一興に落ち着かせようとした。
その数時間前にバックステージで行なわれたインタビュー。いつものごとく気は散りまくっていたが、機嫌や体調が悪いようには見受けられなかった。『セプテンバー』(インタビュー当時のタイトル。二転三転の結果『ジャクソンヴィル・シティ・ナイツ』として世に出た)のライナー執筆を控えているのに資料が何もなかった私は、少しでもネタになることを聞き出そうと必死だったが、ライアンにしたら、そんなことは御構いなしで、さらりとかわす。けれど、ふと集中力が高まった瞬間には思いがけず(というのも失礼な話だが)おもしろい話が聞けたりもした。いずれにせよ、疲れた取材ではあった。
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野外フェスティバルにはこれまで何度か出演していますが、フジ・ロックに関して事前情報はありましたか?
「野外は1度しかやってないよ。しかもアメリカじゃないんだ。フジに関しては何も知らなかったよ」(筆者註:嘘です。アメリカでもいくつかの野外フェスに出演しています)
(手元に置いた存在感のある本が気になって)その本、気になるんですけど、何ですか?
「『シャントラム』という本で、オーストラリアの刑務所から脱走した人の実話。刑務所の壁を乗り越えて逃亡し、そのままインドに向かって、オーストラリア政府の追っ手からも逃げたんだ」
音楽を生み出す時に、本からインスパイアされることもありますか?
「ない」
実体験や実際に見聞きしたことでないと音楽にはつながらない、ということですか?
「そんなことはないよ。イマジネーションを働かせる場合も多いよ」
ニュー・アルバムのタイトルが変わった理由は何ですか?
「こっちの方がしっくり来たから」
先日の、フィル・レッシュとのライヴは楽しかったですか?
「2晩やったんだけど、最高に楽しかったよ!」
あれだけ(グレイトフル・)デッドの曲をやるのは難しくないですか?
「まぁね、難しいのもあるよ。でも、彼らの曲を演ってる時っていうのはさ、ちょっとしたきっかけだけを覚えてれば、あとは我を忘れるというか、完璧に別世界へとトリップしちゃってるんだよね」
プレッシャーはないんですか?
「ないよ。よく訊かれるけど、俺はフィルから誘われたわけだからね。彼いわく「デッドの曲は人々のためにある」。だから、みんなで演奏していいわけだし、誰かがやらなくちゃならない。みんながみんな「自分にはその力がない」と怖れていたら、いつまで経っても演奏されないでしょ? 最大の敵は'恐怖'なんだ。そして俺は'恐怖'に負けることはないよ。だって、俺には愛があるもの。デッドの曲は最高なんだ。だから俺なりに表現したいのさ」
『セプテンバー』のあとに『29』も出すんですよね?
「そうだよ。とっくにできあがってるよ。『セプテンバー』だって、タイトルが変わった以外はずっとできていたんだ。(誰かに)ねえ、どうしてタイトルを変えたんだっけ?」(スタッフとしばし雑談に入ってしまう)
1年に3枚も作品をリリースする中で、特に『セプテンバー』においてあなたが表現したかったことは、何ですか?
「ブックレットを見てよ。たぶん、俺が歌ってることは、必ずしもきみの解釈と同じとは限らないから、何も強制したくないんだ。曲を神聖にするのは、俺の口から君の耳に届くまでの間に生じるミステリーだよ」
前に「なかなか幸せになれないことが音楽へのモチヴェーションだ」と言っていましたが…。
「たぶん、その時はそれが本音だったんだろうな。自分としては、それ以降、より深いところまで旅ができていると思いたいけどね。たしかに、アンハッピーな若者ではあったよ。みんなそうだと思うけど、20代半ばはいろいろあったよ。でも今は少し楽になったと言うか、さ」
では、今現在、最大のモチヴェーションは?
「“IT”。それがなんだかわからないけど、マジックであることに代わりはないよ。俺に表現をさせてくれる何か。最近ではそれを、天からの授かりものと思うようになってきたんだ。ACTIVE
COMPASSION(筆者註:積極的な思いやり、とでも訳せばいいか)であると思いたいな。みんなと分かち合いたいという気持ち」
悲しい時と楽しい時。曲作りに違いはありますか? どっちが楽ですか?
「楽なのは、自分の気持ちを正直に書くこと。だからどっちも難しくはないよ。それってさ、誰かに『悲しい時に笑うのと、嬉しい時に顔をしかめるのと、どっちが楽?』って訊いてるようなもんだよ。答は、わからない」
悲しいことを書けば、気持ちは和らぐ?
「いや、違うな。例えるならば、悲しい曲を書くことは、一緒に悲しんでくれる友達を作り出すみたいなもの。一緒に気持ちを分かち合ってくれる人を、ね」
『セプテンバー』にも、そういう曲はあるのですね?
「もちろんさ」
何曲か女性とデュエットしている曲がありますけど、あれは誰と?
「声はたくさん入っているけど、5曲目の『Dear John』はノラ・ジョーンズ。他にもいるけど、誰だったっけ? 忘れちゃった」(ここでニコチンパッチの話を誰かと始める)
もしかして、禁煙中ですか?
「ちょっと風邪気味なんでね。胸に来るとやばいからさ」
で、「My Heart Is Broken」は?
「他にオラベルというアメリカのバンドの人もいれば、カーディナルズのベースのキャサリンもたくさん歌ってる。つまり、デュエットという考え方じゃなくて、たくさんの声という感じなんだよね」
演奏はカーディナルズじゃないんですか?
「いや、カーディナルズだよ。RYAN ADAMS & THE CARDINALSだ。(テーブルの上にあった視聴盤を見て)あ、でもここにはライアン・アダムスとしか書いてないなあ」
アメリカから届いたままなんですけど。
「使えねえなあ。みんなハイになってる場合かよ」
音楽を作る時に、どのアイディアの引き出しを開けるかは意図してやるものですか? それとも作ってるうちに自然と開いていくものですか?
「曲をカテゴライズするのは本当に危険なことだよ。なぜなら、俺の音楽はどれもメッセージでしかないから。どうやってプレゼンテーションするかは、全然重要じゃないんだ。重要なのは、俺の音楽を聴いた人が、どれほど潤うかってこと」
違うタイプの曲だとしても…
「いや、俺の曲はどれも全部同じ。どれもどこかどんよりしていて、それによって、相手と繋がろうという意図なんだ」
カントリーもハードコア・パンクも一緒?
「人間が鳥のさえずりを聞く時、鳥が何を言ってるかはわからない。でもそこから感じるものはある。なぜならそれは命の表現だから。鳥は自分に向かって歌ってるかもしれないし、風に向かって歌ってるかもしれないし、ただ街角に向かって歌ってるかもしれない。言葉がないからわからない。でも感じるものはある。あと、ひとつの鳥と別の鳥との区別はつかない。でも歌ってる歌は同じなんだ。逆に、鳥が俺の歌を聴いたら、どんなタイプの歌も同じに聞こえるだろう。そして思うんだ。『また人間がうるさくしている』とね。すべては同じ、生命の歌なんだ」
そういえば、少し前にウィスキータウンを一晩だけ再結成してましたね。
「あれは、友達のケイトリンと一緒に町に繰り出した時に、たまたま他の友達とか今のバンド・メンバーとかとウィスキータウンの曲を演奏しただけだよ。別にウィスキータウンとしてやったわけじゃないんだ。メンツも違うしね。ただの深夜のお楽しみだよ」
再結成は?
「あり得ない」
しばらくはカーディナルズで?
「それも、わからないよ」
ちなみに『29』は誰と制作したのですか?
「腕の怪我がよくなって最初に作った作品なんだ。イーサン・ジョンズと。ギターとピアノが僕で、JPバワーソックがギター。メインはこの3人。あと、少し違う楽器も入ってたりはするけど、めちゃくちゃ簡素な作りだよ」
29歳だから『29』?
「いや。聴けば理解するよ...たぶん。パズルみたいなもんだから」
私にもわかりますかね?
「もしかするとね。俺にもわからないことはあるからね。タイトルの意味を深く追求したい人は、きっとひとつの結論に達するだろう。でも、アルバムを聴けば聴くほど、『いや、ちょっと待って、こっちの意味かも』と思うだろう。一種のミステリーだよ」
昨年、30代に突入しましたが、20代を振り返ってどう思いますか?
「盛りだくさんだったよ。俺は自分の人生しか知らないから、他人のそれと比べることはできないけど、あまり考えすぎるのは、ちょっとバッド・ラックのような気がする。人それぞれ、いろいろあるからね。まあ、流れてここまで来たって感じもするけど、なかったらないで、それにこしたことはなかったかも。いや、別に自分の人生がクソだったとは言わないよ!(笑)でも本当にどうだったかは自分ではわからないんだ。なかなか興味深い質問だね(笑)」
では、30代をどうやっていいものにしたい?
これもいい質問だね。なんだろう...もっと思いやりをもつこと、愛を示すこと、ちゃんと考えること、ちゃんと判断をすること、自分らしくいること、今を大切に生きること、かな。人間には、できることはいろいろあるよ。なりたいようになれなくても、少なくとも人生経験を積むことはできる。あとは、いろんなものを必要以上に変えようとしないことかな。今あるものを楽しむ。これってなかなか難しいことだけど、これこそ、経験から学んだつもりだよ」
今、あなたを一番幸せな気持ちにさせてくれるものは?
「グレイシーとパーカー! 犬と彼女だね」
あの白いコですね?
「そうそう! あれがグレイシーだよ」
ダニー(・クリンチ:カメラマン)がドキュメンタリーを撮っているんですか?
「カメラを回してはいるけど、どうなるかはまだわからないよ。使えるかどうかもわからない。でも使えればいいな」
今夜のセットリストは?
「一応青写真として作るけど、まだできてないんだ。セットリストというより'提案書'みたいなもんだね」
リクエストしたら応えてくれますか?
「俺の場合、リクエストされたものはやらない主義!(笑)」
以前、フィラデルフィアではやってましたけど…。
「気が向けばね。ラッキーな人もいるんだよ、世の中には。で、何聴きたいの?」
やってくれないと困るから、言うのはやめておきます。
「じゃあ、手の中にリクエストを唱えて、それをステージに向かって投げるといいや。マジックみたいに俺に伝わるかも」
そうします。最後にひとつ聞きたいのですが、あなたはよく「Rose/薔薇」を歌詞に登場させますが、あなたにとって薔薇が象徴するものは何ですか?
「春、新しい命、女性の発するエネルギー、成長の再開(RETURN OF GROWTH)、同情、ロマンス、美」
薔薇の花を買うことは?
「あるよ。自分のためじゃないけど。パーカーのために。グレイシーは食べちゃうからさ!(笑)」
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ライアンの最新アルバム
RYAN ADAMS
LATEST ALBUM
『イージー・タイガー/EASY TIGER』
<CD>UICM1044 ユニバーサル・ミュージック
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NEAL CASAL LATEST ALBUM
『No Wish To Reminisce』
<CD>GT1008 GOATEE
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