
メンバー左より:マシュー・ボーグ Matthew Borg(g)、ノア・ルービン Noah Rubin(ds/vo)、マイケル・イアン・カミングス Michael Ian Cummings(vo/g)、トッド・ダールホフ Tad Dahlhoff(b/vo)

08年初頭、EPで本邦デビューを飾ったポートランド拠点の4人組が、デビュー・アルバム発売を控えたこの夏、サマー・ソニック出演のため初来日を果たした。本国アメリカでは、オルタナ・カントリーのジャンルにくくられることもあるが、それですべてが言い表せるわけではない。ザ・バンドやディランの遺伝子を受け継ぎつつピクシーズやニルヴァーナも通過点にあった世代である。デビュー・アルバム『キング・オブ・ロサ』(9月発売)をまずはご一聴あれ。外見こそ今どきの若者ながら、その骨太なロックの世界に、まがいものの匂いはない。 |
東海岸から西海岸に移住したら、違う国に来たみたいな感じだった。
みんなが優しすぎて、ちょっと怪しいって感じるぐらい。
- マサチューセッツでバンドを結成したそうですが、メンバーの出身地もその辺りですか、それとも違う場所からそこに集まってきたのですか?
- マイケル(M):3人はマサチューセッツ出身で、ベースのトッドはセント・ルイス。彼は5年間ボストンに住んでて、隣り近所だった時にベースがいなくて一緒にプレイし出したのが出会いなんだ。
- 最近ポートランドに移住したようですが、4人そろってバンドとして拠点をポートランドに移したということですか?
- M:そうだよ、ヴァン1台にみんなで乗ってアメリカ横断、まるでワイルド・ワイルド・ウエストみたいにね。
- なぜポートランドに?
- M:かっこいい街だし、今どんどん発展していて、物価も若い人が住むには高すぎないし。ポートランドに住んでる人は、まるでみんな23歳でバンドをやってるみたいだよ。
- 正確には、いつから住み始めたんですか?
- M:去年の12月からだから、8〜9ヶ月ぐらい経ったよ。
- ポートランドはインディ・ポップのミュージック・シーンが確立していると思いますが、そういうバンドとの交流もあるんですか?
- M:すごく小さい街だから、そこで起こっていることにすぐ触れることができるんだ。あの街はDIY精神が溢れてて、誰かの家の地下室でショウをやったりすることも多いし、当然クラブもたくさんあるし。
- アメリカの東と西では文化的背景が違いますが、実際に住み慣れた東海岸を出て戸惑うことはありましたか?
- M:そうだね、東部から来た者としてはやっぱり戸惑ったよ。東海岸の人は西ほどフレンドリーに接することがないんだ、だから西海岸に来てみんなが優しすぎて逆にちょっとフェイクな感じがして。最初の何週間かはそれをどう捉えたらいいのかがわからなくて、例えばバスに乗るだけでも、お店でコーヒー1杯頼んだだけでも5分ぐらい普通に会話をしたりとか、違う国に来たみたいな感じだった。みんなが優しすぎて、ちょっと怪しいって感じるぐらい。
- フェイクなのはLA、というかハリウッドだけだと思いますけど(苦笑)。
- M:言えるね! たしかにLAは絶対フェイクだよね。不思議だよ、北西のエリアとカリフォルニアはまた別物だし、南部も違うし。アメリカは大きいからいろんな場所でカルチャー・ショックを受けるよ。
ボストンにいながらピクシーズの影響を受けないほうが難しいよ。
- バンドを始める時、自分たちの好きなバンドを手本にしたり、好きなサウンドを真似たりしながら目指すべきバンドの青写真を描いたりしましたか?
- M:誰でもバンドを始める時は音楽の趣味が合う人をみつけようとすると思うんだよね。だからそれは話し合いを敢えてしなくてもすぐにわかり合えた。ただ自分たちの曲を作って、自分たちの道を切り拓いていくだけ。前もってこういうバンドにしたいという何かがあったわけじゃないんだ。ただ自分たちが好きな音楽を作って、それを他の人も気に入ってくれることを願うだけだよ。
- 4人ともこの人は絶対に好きというアーティストは誰ですか?
- M:キンクス、ビートルズ、ザ・バンド、ボストン出身だからピクシーズも好きだし。
- アルバムの中には「すごくピクシーズっぽいなあ」って思う曲がありましたね。
- M:ボストンにいながらピクシーズの影響を受けないほうが難しいよ。
- 資料にはザ・バンドをはじめとするルーツ・ロックの影響が強いとだけ書いてあるので、そういう意識で音を聴くと「あれ?」って思う瞬間がすごくあって、そこにピクシーズが聞こえてきたことが嬉しかったし、新鮮でした。
- M:もちろん60年代の音楽からも絶対に影響は受けてる。でもそれだけじゃなくてレアなガレージ・ロックだったり80年代や90年代前半のロックにも影響受けているし、いろんなものを聴いているよ。
- 今回のデビュー・アルバムはいつ頃レコーディングしたんですか?
- M:今年の2月から3月かな。
- 先にリリースされたEPに入っていた曲もこのアルバムには入っていますが、それ以外の曲はこのアルバム用に作られた曲ですか、それとも前から書きためていたものですか?
- M:EPにもあったのは「シェルター」という1曲だけで、それ以外はこのアルバム用に作られた曲だよ。
- あなたが全曲書いたんですか?
- M:そう
- 曲作りをするにあたって、特にインスパイアされたことや自分の中でのテーマはありましたか?
- M:アルバム全体を通してのテーマはないと思う。全ての曲は僕がどう物事を捉えて感じているかを書いたもので、自分が面白いと思うあらゆるものについて書いた。それは打ち明けるためだったり、ただ言いたいと思って書いた曲だったり。でもコンセプト・アルバムではないから全体を通したテーマとかストーリーはないんだ。1曲ずつその瞬間にインスパイアされたものを書いたんだ。
- ソングライターは自分の経験や人生をもとに書く人と、空想の世界からイマジネーションを働かせて曲をつくる人といると思いますが、自分ではどういうタイプだと思いますか?
- M:どうだろう、いろんなアプローチの仕方があると思う。想像したことだからといって、必ずしもそれが自分に起こったことではなかったというわけでもないと思うし。僕がつくる曲は全て、実際に自分が一人称で語っているものではなくて、違う人のことを客観的に書いたものでも、それも何らかの形で自分に起こっていることだと思うんだ。だからはっきり言うのは難しいよ。例えば空想の話を曲にしたとしても、それは同時に自分のことでもあるんだ。意味通じるかな?
- はい。他のメンバーはマイケルが書いてくる曲に対して、これどういう意味だろう?とか思うことはありますか?
- マシュー(MA):毎回彼が作った新しい曲を聴く時は、もちろん曲としても聴くけど、同時に自分がこの曲にさらに何ができるかということを考えるんだ。いつも試行錯誤の繰り返しで、3人ともそれぞれのアイディアをリハーサルに持ってきて、意見を言い合って。歌詞については、その曲を少なくとも20回ぐらいプレイするまではあまりきちんと聴いてないから聴いてすぐに意味とかまでは考えてないね。最初は音楽に集中して、その後に実際の曲の内容を聴くんだ。
14歳の僕はカート・コバーンのようにやろうとしてただけ。
- 自分がすごく影響を受けたギタリスト、シンガー、ソングライターを教えてください。
- M:影響を受けたシンガーはジョン・レノンとかエリオット・スミス、そういう感じの人かな。
- MA:すごくたくさんいるけど、一人をあげるならジョージ・ハリスン。でも他にも今聴いている人だとドクター・ドッグのギタリストもすごく好きだし。もっと世代が上の人だとジミー・ペイジの影響もあると思う。これはほんの一部だけどね。
- M:デイヴ・デイヴィスとか
- MA:そうだね、デイヴ・デイヴィスも
- M:ジミ・ヘンドリックスも
- ジョン・レノンとエリオット・スミスはソングライターという意味で挙げたんですか?
- M:そうだね
- では、シンガーというくくりでいうと?
- M:ただシンガーね、きれいな声ってこと? ハリー・ニルソンはすごくいい声してると思うよ。でもボブ・ディランも好きだし、声そのものを気に入るというよりは、その声でどうやって伝わってくるかってことが大事だから。
- あなたは、もともと歌も歌っていたんですか? よくある話で、最初はギターを弾いてて、ヴォーカルがいないから自分がやることになったというのがあるじゃないですか?
- M:それに近いかも。なんとなくそうなったって感じ。もともとシンガーだったわけではないし、ギターを弾き始めるまで歌うこともなかった。ただ何曲か弾けるようになって、それに合わせて歌って、14歳の僕はカート・コバーンのようにやろうとしてただけ。
- ソロでやろうと思ったことは?
- M:今はそんな気はないよ、まだ早いと思う。前にソロでプレイしたことはあるけど、そんな真剣な場ではなくてね。僕はバンドでやるのが好きだし、他の3人がデッド・トゥリーズの75%で、僕は残る25%。ただの一部なだけ。曲を書いているからといって僕のバンドっていうわけではない。3人がいなければこういうサウンドにはならないよ。この先いつかソロでやることもあるかもしれない、それはわからないけど、僕はバンドでやる方がおもしろいと思うしもっといろんなことができると思うんだ。
- 新人のデビュー・アルバムは速い曲や勢いのある曲でごまかされることも多々ありますが、あなた達の作品に関して言えば、ポップだったり勢いまかせということはなく、どの曲も丁寧に作られているという印象を受けたのですが、もともとあまり速い曲は書かない方ですか?
- M:ただ個人的にそんなにおもしろいと感じないんだ。コード・チェンジが聞こえるのが好きだし。だからといってバラードしか書かないっていうわけではないけど、いわゆるポップな曲は同じことが繰り返されているだけだし、そういった速いアレンジメントを入れることで作曲の不出来な部分を隠すことができちゃうんだよね。でも僕自身はコード・チェンジを聞いたり、メロディをじっくり聞かせたいんだ、メロディがひとりで生きるには、そのゆったりした余裕も必要だと思う。だから最近の新しいバンドに僕がはまるってことはそんなにないのかも。僕にとって速い曲は退屈なんだよ、ただそれだけ。
- 「シェルター」は前のアレンジメントも好きだったので、今回ので少し変わって残念だなと思ったのですが?
- M:そんなに変わらないけど、口笛がないんだよね。
- 口笛好きなんですよ。かわいくて。
- M:そうなんだ! 今になってちょっと口笛をいれなかったのは後悔しているんだよね、その意見を聞くのはこれが初めてじゃないし。でも、今回口笛をやらなかった理由のひとつはあのピーター・ビヨルン・アンド・ジョンの口笛吹いてる曲が出て、なんか聴きすぎたっていうか。もうそれでやり尽くされたって感じだったし、聴いてる人をイライラさせたくなかったんだ。
- MA:最初のヴァージョンを作ったのは、あの曲より前だったんだよな。
- ならばせめて、明日のライヴではぜひお願いしますね。
- M:やるよ、大きい音でね。任せてよ。
- そういえば、去年ピクシーズのフランク・ブラックに取材した時に今一番お気に入りの歌を聞いたら、そのピーター・ビヨルン・アンド・ジョンの口笛の曲だって答えてました。
- M:いや、僕もあの曲は好きなんだけど、何回も聴いちゃってそれが頭に入り込んで、その後にこの曲が出るとなって口笛だって感じでそこだけなんか取り上げられるのもいやだったし。まあ、でもただ僕が口笛に飽きちゃっただけなんだ。でももしかしたら入れておいた方が良かったのかもね。わかんないけど。
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