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Special Features

AF流、音楽映画入門

注目の公開待機作
『ヤング・アット・ハート』

東京国際映画祭出品決定
今秋、シネカノン有楽町1丁目ほかにて公開

『ヤング@ハート』

世界一ロックなコーラス・グループをとらえたドキュメンタリー

ヤング@ハートとは

1982年に米マサチューセッツ州ノーサンプトンの高齢者向け公営住宅の住人によって結成されたコーラス・グループ。メンバーの中には、かつてプロとしてエンターテインメントの世界にいた人もいれば、80歳になって初めて歌った人もいる。地元でのコンサートのみならず、ヨーロッパ、オーストラリア、カナダ・ツアーも経験。2008年現在、メンバーは27名。創設時のメンバーは残っていないが、彼らの熱いハートは確実に受け継がれている。


生きる力、音楽の力
by Akao

 普通に考えたら、どの人もみんな、私なんかよりはずっとずっと死に近い。何度も入退院を繰り返したり、癌の治療を行なっている最中の人もいる。けれど、彼らに悲壮感や、死を恐れたり拒んだりするムードは微塵もない。残された日々を、どれだけ元気に歌いきれるか、それだけだ。元気に歌うことができたなら、自分もハッピー、仲間もハッピー、家族もハッピー。映画『ヤング@ハート』は、平均年齢80歳ながら、生命力に溢れた老人たちの奮闘ぶりをおもしろおかしく温かく、そしてリアルに描いている。
 ソニック・ユースを歌わせるのは、あまりに奇をてらい過ぎてはいないだろうか、と思った。けれど、困難な曲にも果敢に挑む老人たちの姿を見ながら、みなが厳しいと口を揃えるボブ・シルマン(演出/指導/指揮)の意図するところが分かった気がした。いつかどこかで誰かが言っていた。「できることをやるんじゃ、つまらない。ちょっと無理かもしれない、と思えることをやり遂げてこそ達成感は得られるのだ」と。実際、壁にぶち当たった老人たちに「この曲はやめようか?」とボブが持ちかけるシーンで彼らは、「いや、やめない!」と言い張るのだ。そして、うまく歌えた暁には「私たちの曲になった!」と喜ぶのだ。なんという意欲。
 デヴィッド・ボウイの「ゴールデン・イヤーズ」、ザ・クラッシュの「シュド・アイ・ステイ・オア・シュド・アイ・ゴー」、スプリングスティーンの「ダンシン・イン・ザ・ダーク」、“can”が71回も出てきてみんなを混乱させたアラン・トゥーサンの「イエス・ウィ・キャン・キャン」…どの曲も彼らが歌うと、時に原曲とは違った意味合いを持ち、それもまた真理であると思えるのが素晴らしい。
 撮影の途中でこの世を去ってしまうメンバーもいる。が、そんな時でも残された仲間たちは歌う。「私だったら、自分が死んでもみんなには歌って欲しい。だから、私も歌う」。最年長92歳のアイリーンおばあちゃんの毅然とした姿が、たまらなくかっこいい。亡き仲間に捧げられた「フォエヴァー・ヤング」(ボブ・ディラン)と、「フィックス・ユー」(コールドプレイ)に、揺さぶられない人がいるのだろうか。
 歌うことは生きること。生きることは歌うこと。80歳になっても、何かに一生懸命になっていられるというのは、この上なく贅沢でしあわせなことなのだ、と思わずにはいられない。そして、彼らに生きる力を与えている音楽の力を、改めて思うのだ。